○丹波市こどもの権利に関する条例
令和7年3月6日
条例第14号
全てのこどもは、生まれながらにして自由であり、いかなる差別も受けることなく、一人の人間として尊重され、人間らしく生きる権利を持っています。
また、自ら育つ力と多くの可能性を持ち、次代の社会を担うこどもが、安心して今を幸せに生き、夢や希望を抱きながら、心身ともに健やかに成長するためには、あらゆる暴力や虐待、いじめなどから守られ、甘えたいときに甘えられ、自分らしく育ち、自分の思いや意見を自由に表明し、社会に参画できる権利が保障される必要があります。
こどもは、周囲の人々から愛され、思いが受け止められ、認められていると実感することで、自己肯定感を抱き、自己決定の体験を積み重ねながら自己実現に向かう意欲を高めることができます。そして、様々な人との関わりや、いろいろな経験を通じて、自分を大切にする気持ちや他者を思いやる心を養いながら自立し、成長していきます。
大人は、こどもを単に守られる存在としてではなく、権利の主体として尊重し、誠実に向き合い、その思いや意見を十分に受容し、こどもにとって最善の利益を優先して考え、支えていく責任があります。
私たちは、日本国憲法をはじめ、児童の権利に関する条約やこども基本法等の趣旨を踏まえ、全てのこどもが心身ともに健やかに成長し、及びその権利が擁護され、将来にわたって夢や希望を持つことができる社会の実現を目指し、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、全てのこどもが生まれながらに持っている権利の内容を明らかにするとともに、こどもの権利を守るための社会の責務や役割を定めることで、こどもが健やかに自分らしく成長し、将来にわたり身体的、精神的及び社会的に幸せな状態で生活を送ることができる社会を実現することを目的とします。
(1) こども 心身の発達の過程にある者をいいます。
(2) 自己肯定感 自分の良い面だけでなく悪い面も含めて、自分は自分で良いと受け止めることができる感覚をいいます。
(3) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいいます。
(4) 育ち学ぶ施設 児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する児童福祉施設、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校その他のこどもが育ち、学び、活動するために利用する施設をいいます。
(5) 市民 市内に住所を有する人、働く人又は学ぶ人及び市内で事業活動を行う個人又は団体をいいます。
(基本理念)
第3条 この条例に規定するこどもの権利は、次の各号に掲げる理念に基づき保障されなければなりません。
(1) こどもが権利の主体として尊重されること。
(2) こどもの最善の利益が優先されること。
(3) こどもの年齢及び成長に配慮されること。
(4) こどもがあらゆる差別をされないこと。
(生きる権利)
第4条 こどもは、安心して健やかに生きるために、次に掲げる権利が保障されます。
(1) 命が守られ、かけがえのない存在として大切にされること。
(2) こどもの気持ちが理解され、愛情を持って育まれること。
(3) 心身の健康に配慮され、適切な医療及び福祉が受けられること。
(4) いじめ、虐待、体罰その他あらゆる形の暴力を受けず、また放置されないこと。
(5) あらゆる差別をされず、また社会的に受け入れられること。
(育つ権利)
第5条 こどもは、社会の中で自分らしく育つために、次に掲げる権利が保障されます。
(1) 遊び、学び、休み、のびのびと育つこと。
(2) 個性が認められ、人格が尊重されること。
(3) 自分に関することを年齢及び発達の程度に応じて主体的に決めること。
(4) 心身ともに安心して過ごせる居場所が確保されること。
(5) 成長に必要な情報の入手及び活用ができること。
(6) 文化、芸術、スポーツ及び自然に触れ、親しむこと。
(守られる権利)
第6条 こどもは、自分を守り、又は自分が守られるために、次に掲げる権利が保障されます。
(1) あらゆる権利の侵害から逃れられること。
(2) 成長が阻害される状況から保護されること。
(3) こどもであることを理由に、不当な扱いを受けないこと。
(4) 障がい、性別、国籍、家庭の状況等を理由として、不利益を受けないこと。
(5) 秘密が守られ、誇りを傷つけられないこと。
(6) 困ったこと、心配していること、不安なことについて、いつでも相談できること。
(参加する権利)
第7条 こどもは、自分たちに関わることについて意見を述べ、社会に参加するために、次に掲げる権利が保障されます。
(1) 仲間を作り、自由に集うこと。
(2) 自己表現及び意見の表明ができ、年齢及び発達の程度に応じてそれらが尊重されること。
(3) 社会に参画し、意見等が生かされる機会があること。
(4) 意見の表明や社会への参画に際し、適切な支援が受けられること。
(保護者の役割等)
第8条 保護者は、その養育するこどもの発達及び養育について第一義的な責任者であることを認識し、そのこどもの権利を保障しなければなりません。
2 保護者は、その養育するこどもの最善の利益を考慮し、そのこどもの成長及び発達の程度に応じた支援に努めるものとします。
3 保護者は、その養育するこどもの言葉や表情、しぐさから、こどもの思いや考えを受け止め、これを尊重するものとします。
4 保護者及びこどもと同居する者は、そのこどもに対して、虐待、体罰等を行ってはなりません。
5 保護者は、そのこどもの養育に当たり、支援が必要な場合には支援を求めるようにしなければなりません。
(育ち学ぶ施設の役割等)
第9条 育ち学ぶ施設の設置者及び管理者(以下「施設設置者等」という。)は、こどもの権利を保障しなければなりません。
2 施設設置者等は、こどもが安心して安全に自分らしく育ち、学び、又は活動することができる環境の整備に努めるものとします。
3 施設設置者等及び職員(以下「施設関係者」という。)は、こどもの最善の利益を考慮し、年齢及び発達の程度に応じた適切な支援に努めるものとします。
4 施設関係者は、こどもが、行事等に参加する機会及び意見を表明する機会の確保に努めるものとします。
5 施設関係者は、こどもに対して、虐待、体罰等を行ってはなりません。
6 施設関係者は、いじめの防止に努めるものとします。
7 施設関係者は、虐待、体罰、いじめ等が発生した場合には、関係機関と連携し、こどもの救済等に努めるものとします。
8 施設設置者等は、こどもの権利を保障するための必要な活動に当たり、支援が必要な場合には支援を求めるようにしなければなりません。
(市民の役割等)
第10条 市民は、こどもの権利が保障されるよう、家庭、育ち学ぶ施設及び地域で相互に連携を図りながら協力しなければなりません。
2 市民は、地域の中でこどもを見守り、こどもが安心して過ごせるよう努めるものとします。
3 市民は、こどもが、地域の行事等に参加する機会及び意見を表明する機会の確保に努めるものとします。
4 市民は、こどもに対して、虐待、体罰等を行ってはなりません。
5 市民は、こどもの権利を保障するための必要な活動に当たり、支援が必要な場合には支援を求めるようにしなければなりません。
(市の役割等)
第11条 市は、こどもの権利を尊重し、あらゆる施策を通じてこれを保障しなければなりません。
2 市は、家庭、育ち学ぶ施設、事業所、地域等においてこどもの権利が正しく理解されるよう必要な支援や普及啓発に努めなければなりません。
3 市は、こどもが市の施策に対して意見を表明する機会の確保に努めなければなりません。
4 市は、こどもが社会に参画する機会の確保に努めなければなりません。
(権利擁護委員会の設置)
第12条 市は、こどもの権利の侵害の防止を図るとともに、こどもの権利が侵害された場合に、早期にこれを排除し、及び救済するため、丹波市こどもの権利擁護委員会(以下「委員会」という。)を設置します。
(任務)
第13条 委員会の任務は、次のとおりとします。
(1) こどもの権利の侵害に関し、必要な助言及び支援を行うこと。
(2) こどもの権利の侵害に関する救済の申立て又は委員会の発意に基づき、事実の調査又は調整を行うこと。
(3) 必要に応じ、市や育ち学ぶ施設等に対し、こどもの権利の侵害に関する是正措置を講ずるよう要請し、又は制度の改善を求めるための意見を表明すること。
(組織等)
第14条 委員会は、委員3人以内で組織し、こどもの権利に関し優れた識見を有する者のうちから市長が委嘱します。
2 委員の任期は3年とし、再任されることを妨げません。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。
(委員の責務)
第15条 委員は、公平かつ適切に職務を遂行するとともに、その職務の遂行に当たっては、関係機関との連携及び協力に努めなければなりません。
2 委員は、その職務上の地位を政治的、営利的又は宗教的な目的に利用してはなりません。
3 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。その職を退いた後も同様とします。
(委員長)
第16条 委員会に委員長を置きます。
2 委員長は、委員の互選によりこれを定めます。
3 委員長は、会務を総理し、委員会を代表します。
4 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、あらかじめ委員長の指名する委員が、その職務を代行します。
(会議)
第17条 委員会の会議は、委員長が招集し、その議長となります。
2 委員長は、必要があると認めるときは、委員以外の者を出席させ、意見を聴き、若しくは必要な資料の提出を求め、又は調査することができます。
(是正措置の要請等に係る措置)
第18条 第13条第3号の規定による是正措置の要請を受けた者又は意見を表明された者は、これを尊重し、必要な措置を講ずるよう努めるものとします。
(その他)
第19条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和7年4月1日から施行する。ただし、附則第3項の規定は、公布の日から施行する。
(丹波市特別職に属する非常勤の職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
2 丹波市特別職に属する非常勤の職員の報酬及び費用弁償に関する条例(平成16年丹波市条例第41号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
(準備行為)
3 第14条第1項の規定による委員の委嘱及びこれに関し必要な手続その他の行為は、この条例の施行の日前においても行うことができる。